カスタマーサービスの自動化とは、電話、チャット、メール、セルフサービスを通じて寄せられる顧客からの問い合わせに、人間のオペレーターが各ステップを対応することなく、ソフトウェアで回答・解決することです。
その範囲は、IVRメニューやメールの自動返信のようなシンプルなルールから、顧客自身の言葉で伝えられた要望を理解し、アカウントを照会し、変更を行い、その内容を確認するAIエージェントまで多岐にわたります。ほとんどのコンタクトセンターでは、すでに前者を運用しています。課題は、後者をどこまで導入し、どこから始めるかです。
本ガイドでは、チャネルの種類、最初に自動化すべき問い合わせと人が対応し続けるべき問い合わせ、自動化された電話が実際にどのように機能するか、自動化が失敗しやすいポイント、効果の測定方法、そして簡潔な導入チェックリストを紹介します。
カスタマーサービスの自動化には何が含まれますか?
オペレーターを介さずに行われるサポート対応のあらゆる部分が含まれます。具体的には、問い合わせへの応答、顧客の特定、回答の検索、対応の実行、結果の記録です。カスタマーサービス自動化ソフトウェアは、自動カスタマーサポート、チャットボット、音声エージェントのいずれの名称で販売されていても、大きく2つのグループに分けられます。
- ルールベースの自動化は、誰かが事前に作成したフローに従います。IVRメニュー(「請求については2を押してください」)、定型のメール返信、チャットボットのデシジョンツリー、ヘルプデスクのルーティングルールなどが該当します。動作が予測しやすく運用コストも低い一方、作成者が想定した内容にしか対応できません。
- AIベースの自動化は、顧客の意図を解釈し、必要な情報を判断し、システムを呼び出して対応を実行します。スクリプトにない言い回しにも対応でき、手順を説明するだけでなく実際に処理を行えます。
多くのチームは両方を併用しています。キーパッドでのPIN入力のような固定的でリスクの低いステップにはルールを、その前後の会話にはAIを使います。AIが設定された範囲内で問い合わせをエンドツーエンドで解決する状態を、私たちは自律型カスタマーサービスと呼んでいます。これは同じスペクトラムの最も先にあるものです。
どのカスタマーサービスチャネルを自動化できますか?
主要な4つのチャネルはすべて自動化できます。ただし、うまく自動化する難しさと、応答できなかった場合のコストはチャネルごとに異なります。
- 電話。最も難易度が高く、通常は人員配置のコストも最も高いチャネルです。通話中は1人のオペレーターがその間ずっと対応に集中する必要があるためです。かつて電話の自動化といえばIVRツリーのことでした。現在では、電話に応答し、発信者と会話し、問い合わせを解決するか転送するAI音声エージェントを指すことが増えています。
- チャット。Webサイトのチャットや SMS は、テキストのほうが音声より処理しやすいため、最初にAIが導入されたチャネルです。ただし、ヘルプ記事へのリンクを返すだけのボットになってしまうリスクがあります。
- メール。自動化によってメッセージの分類やルーティング、返信の下書き作成、シンプルな問い合わせのクローズが可能になります。件数は多くなりがちですが、顧客は電話ほど即時の回答を期待しないため、遅延によるコストは電話よりも小さくなります。
- セルフサービス。ヘルプセンター、アカウントポータル、ステータスページにより、顧客は問い合わせる前に自分で解決できます。コンテンツが最新で見つけやすい場合に効果を発揮します。
中堅企業やエンタープライズのチームにとって、最も注力すべきは通常、電話対応です。顧客は急ぎの用件があるときやセルフサービスで解決できなかったときに電話をかけるため、待ち行列や放棄呼が集中し、質の低いIVRは顧客からの印象を最も大きく損ないます。本ガイドの以降の内容は電話に焦点を当てていますが、そのほとんどはチャットにも当てはまります。
最初に自動化すべき問い合わせはどれですか?
件数が多く、明確なルールに従い、1つの基幹システムでの照会またはシンプルな変更で解決できる問い合わせから始めましょう。多くのサポート窓口では、次の4つのグループが該当します。
- ステータス確認。注文、請求申請、申込、返金、技術者の訪問状況はどうなっているか。
- スケジュール管理。予約の作成、変更、確認、キャンセル。
- アカウント情報の変更。住所、電話番号、支払日、連絡方法の更新。
- よくある質問。営業時間、所在地、ポリシー、利用資格、手順など、回答が文書化されている質問。
これらには3つの共通点があります。意図を認識しやすいこと、正しい結果が1つであること、そして処理を取り消せることです。これらの特徴を持たない問い合わせは、少なくとも当初は人が対応すべきです。
| 問い合わせの種類 | 自動化するか、人が対応するか | 理由 | 設定すべきガードレール |
|---|
| 注文、請求申請、申込のステータス | 自動化する | 1回の照会で明確な回答が得られる | 記録が見つからない場合やステータスがおかしい場合はエスカレーションする |
| 予約の作成と変更 | 自動化する | カレンダーのルールが明確 | 日時を発信者に復唱し、可能であればSMSも送信する |
| 住所や連絡先情報の更新 | 自動化する | 1つの記録へのシンプルな書き込み | 変更前に必ず本人確認を行う |
| 回答が文書化されているよくある質問 | 自動化する | 回答がすでに存在する | 承認済みの情報源のみに基づいて回答する |
| 本人確認 | 手順を自動化する | 質問とPIN入力はスクリプト化されている | 一定回数失敗したら人に引き継ぐ |
| 請求に関する質問 | 照会は自動化し、異議申し立ては人が対応する | 残高や支払期日は事実だが、異議申し立てには判断が必要 | 請求内容に異議が出た時点ですぐに引き継ぐ |
| 返金とクレジット | しきい値未満は自動化する | 少額で取り消し可能な金額はリスクが低い | 上限を超えるものはすべて人の承認に回す |
| 解約 | ケースバイケース | シンプルなものもあれば、引き止めの会話が必要なものもある | どのケースを人が対応すべきか事前に決めておく |
| 苦情や不満を抱えた顧客 | 人が対応する | 共感と臨機応変な判断が必要 | 不満が検知された時点、または人との会話を求められた時点で転送する |
| 規制対象のアドバイス(医療、法律、金融) | 人が対応する | 誤った回答は法的リスクを生む | 事務的な内容のみ回答し、本質的な内容は有資格者に回す |
| 緊急事態や安全に関わる問題 | 直ちに人が対応する | 一刻を争い、重大な影響がある | 解決を試みず、必ず転送する厳格なルールとして扱う |
自社版を作成するには、ヘルプデスクや通話の処理コードから前四半期の問い合わせ理由を抽出し、件数順に並べます。「自動化する」パターンに当てはまる上位の理由が、最初の対象範囲です。それ以外は、その範囲が軌道に乗るまで人が対応し続けます。
電話でのカスタマーサービスの自動化はどのように機能しますか?
自動化された通話は、理解、照会、実行、確認、そして必要に応じた引き継ぎという5つの段階で進みます。ここでは、一般的な予約変更の電話を例に、各段階がどのように進むのか、そして各段階を機能させるために何を接続する必要があるのかを説明します。
理解。発信者が自分の言葉で「木曜日の予約を変更したいのですが」と伝えます。音声エージェントは意図(予約変更)と不足している情報(どの予約か、新しい日時はいつか)を把握します。エージェントが話し始める前に、Retell の着信通話 webhook が発信番号に紐づくアカウントなど、発信者固有のコンテキストを会話に渡せるため、エージェントは既存顧客を名前で迎えることができます。
照会。エージェントが記録を確認します。Retell では、Salesforce、HubSpot、Zendesk、Calendly、Cal.com などのシステム向けの連携ツールを通じて、あるいは注文システムやスケジュール管理のバックエンドなど、それ以外のシステムについては通話中に自社の API を呼び出すカスタム関数を通じて行います。ポリシーに関する質問には、ドキュメント、Webサイトのページ、または同期した Google Drive、OneDrive、Notion のコンテンツから構築したナレッジベースに基づいて回答します。
実行。エージェントが新しい枠を予約したり、記録を更新したり、チケットを作成したりします。この段階こそが、問い合わせを「解決する」ことと「説明するだけ」の違いを生みます。読み取りしかできず書き込みができないエージェントは、必ず「後ほど担当者からご連絡します」で通話を終えることになります。
確認。エージェントは結果を復唱し(「金曜日の午前10時にご予約を承りました」)、SMSが有効な場合は通話中に確認メッセージを送信できます。通話後は、通話後の抽出機能により、要約、発信者の感情、通話が成功基準を満たしたかどうか、そして定義したカスタムフィールドが記録され、CRMに同期することもできます。
引き継ぎ。問い合わせが対象範囲外の場合や、発信者が人との会話を求めた場合、エージェントは通話を転送します。ウォームトランスファー(事前取次)では、エージェントが通話に残り、受け手のオペレーターだけに聞こえるウィスパーメッセージを再生したり、三者通話で発信者を紹介したりできるため、電話を受けた人がゼロから対応を始める必要がありません。Five9、Genesys Cloud、Amazon Connect、Avaya を利用しているコンタクトセンター向けに、Retell は SIP で接続する方法をドキュメント化しており、AIエージェントと既存のキューの間で通話をやり取りできます。
カスタマーサービスの自動化はどこで失敗しますか?
自動化は通常、3つのパターンのいずれかで失敗します。システムにアクセスできない、発信者を固定のフローに押し込む、あるいは抜け道を用意していない、のいずれかです。どれも設計上の判断であり、テクノロジーによって避けられないものではありません。
システムにアクセスできない。会話はできても何も照会できないエージェントは、丁寧な留守番電話にすぎません。顧客は問題を説明し、一般的な回答を受け取り、再び電話をかけてきます。これを防ぐには、ベンダーを選ぶ前に、自動化する各問い合わせに必要な読み取りと書き込み(注文の照会、予約の変更、チケットの作成)を洗い出し、それぞれが実際のシステムで機能することをテストで確認してください。
硬直的なIVRツリー。自分の問題がどの番号に当てはまるかを発信者に推測させるメニューは、誤ったルーティング、再入電、そしてゼロを何度も押す行動を招きます。メニューを「ご用件をお聞かせください」と尋ねる音声エージェントに置き換えればルーティングの問題は解決しますが、それはエージェントが各問い合わせの裏にあるシステムにも接続されている場合に限ります。この切り替えについては、音声AIとIVRの電話ツリーの比較記事で詳しく解説しています。
人につながる手段がない。人と話させてくれない自動化システムほど、発信者をすぐに苛立たせるものはありません。「担当者と話したい」という要望には即座に転送するようにし、不満の兆候、繰り返しの失敗、人が対応すべきリストにある項目をトリガーとして追加しましょう。こうしたルールの設定方法は、AIエージェントが人に引き継ぐべきタイミングに関するガイドで解説しています。
4つ目の、目立たない失敗が、古くなったナレッジです。ポリシーが変わってもナレッジベースが更新されなければ、エージェントは自信を持って先月の回答を伝えてしまいます。コンテンツの担当者を決め、プラットフォームが対応している場合は、Webソースや同期ソースの自動更新機能を活用しましょう。
カスタマーサービスの自動化はどのように測定しますか?
カスタマーサービスの自動化は、自動化前の自社のベースラインと比較して、完結率、解決率、顧客満足度、処理時間の4つで測定します。公開されている業界ベンチマークは問い合わせの構成によって大きく異なるため、目標値としては役に立ちません。重要なのは、自動化した問い合わせの種類ごとに各指標がどう変化するかです。
- 完結率(コンテインメント率)。人への転送なしで完了した問い合わせの割合です。計算式:自動化で完全に処理された問い合わせ数 ÷ 自動化された問い合わせの総数。ただし、不満を抱えて電話を切った発信者も「完結」としてカウントされるため、この指標単体では誤解を招くことがあります。
- 解決率。顧客の要望が実際に完了した問い合わせの割合です。再問い合わせと組み合わせて見ましょう。同じ顧客が、設定した期間内に同じ問題で再度電話をかけてきた場合、最初の問い合わせは解決していなかったことになります。最適化すべきは完結率ではなく、この指標です。
- 顧客満足度(CSAT)。自動対応と人による対応の両方で同じ事後アンケートの質問を行い、比較できるようにします。文字起こしから算出する感情スコアは早期のシグナルとして有用ですが、顧客に直接尋ねることの代わりにはなりません。
- 処理時間。自動化された問い合わせの平均時間と、それとは別に、転送された通話の処理時間を測定します。適切な引き継ぎでコンテキストが共有されていれば、転送された通話のうち人が対応する部分は長くなるのではなく、短くなるはずです。
Retell では、分析ダッシュボードで、通話成功率(定義した成功基準に基づく)、通話転送率、切断理由、ユーザーの感情、通話時間をエージェント別またはエージェントバージョン別にグラフ化できます。AI QA は、設定した解決基準に照らして通話のサンプルを採点し、ハルシネーションやナレッジベースの誤りなどの問題を検出します。より幅広い KPI については、カスタマーサービスの指標に関するガイドで解説しています。
合算値では、大半の通話で失敗している特定の意図が隠れてしまうことがあるため、これらの数値は合計だけでなく、問い合わせの種類ごとに確認しましょう。
カスタマーサービスの自動化はどのように導入しますか?
範囲を絞り、測定可能で、元に戻せる形で導入しましょう。カスタマーサービスをうまく自動化するパターンは、どのチャネルでも同じです。小さな範囲から始め、人への明確な出口を用意し、毎週レビューします。以下のチェックリストでは、最も重要な判断事項をまとめています。
- 前四半期の問い合わせ理由と件数をチャネル別に抽出し、最初の対象範囲として、件数が多くルールベースで対応できる問い合わせの種類を2〜4つ選びます。
- 何かを構築する前に、人が対応すべきリストと転送トリガーを書き出します。
- 各問い合わせに必要なシステムの読み取りと書き込みをすべて洗い出し、エージェントが本番システムでそれぞれを実行できることを確認します。
- ナレッジベースには承認済みの情報源のみを取り込み、最新の状態に保つ担当者を決めます。
- 問い合わせの種類ごとに「解決」の定義を決め、完結率、解決率、CSAT、処理時間の現在のベースラインを記録します。
- リリース前に、エッジケース、怒っている発信者、対象範囲外の問い合わせを含むシミュレーション会話でテストします。Retell のシミュレーションテストでは、変更のたびにこれらを一括で再実行できます。
- まずはトラフィックの一部または特定の時間帯でリリースし、人のチームが転送を受けられる体制を整えておきます。
- リリース時だけでなく毎週、実際の会話のサンプルをレビューし、範囲を広げる前に最も大きな失敗パターンを修正します。
- 現在の問い合わせの種類が解決率を維持できている場合にのみ、次の種類を追加します。
チケット管理の側面については、ヘルプデスクの自動化に関するガイドで、ヘルプデスク内でのルーティング、タグ付け、問い合わせの削減について解説しています。
人につながる選択肢を残したまま電話対応を自動化する
カスタマーサービスの自動化は、明確な回答がある問い合わせに範囲を絞り、その回答を保持するシステムに接続し、人に簡単につながる手段を用意したときに効果を発揮します。電話対応は、多くのチームにとって得るものも失うものも最も大きい領域であり、だからこそ最初に正しく取り組む価値があります。Retell のAIカスタマーサービスプラットフォームは、音声、チャット、SMS にわたってAIエージェントを稼働させ、記録を照会し、システム上で対応を実行し、人の対応が必要な通話はコンテキストとともにチームへ転送します。