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ゼロデータ保持(ZDR)

ゼロデータ保持(ZDR)

ゼロデータ保持(ZDR)とは、プロバイダーが処理後にコンテンツのコピーを一切保持しないことです。LLMや音声AIベンダーにおける対象範囲と、確認すべきポイントを解説します。

ゼロデータ保持(ZDR)とは、サービスプロバイダーがプロンプト、文字起こし、音声などのコンテンツを処理し、応答を返した後にそのコピーを一切保持しない取り決めです。この用語は大規模言語モデル(LLM)のAPIに由来し、通常はリクエストとレスポンスの内容をプロバイダーのログから除外することを意味します。法律や認証ではなく、契約またはアカウントの設定です。

LLMプロバイダーにとってZDRとは何を意味するのか?

ZDRとは、モデルプロバイダーがリクエスト後に入力と出力を保存しないことを意味します。ただし、その対象範囲はプロバイダーごとに異なります。各プロバイダー自身のドキュメントから2つの例を挙げます。

  • OpenAIは、APIトラフィックの不正利用監視ログをデフォルトで最大30日間保持します。ZDRを適用すると、これらのログから顧客コンテンツが除外されます。ただし、ZDRの利用にはOpenAIの事前承認が必要です。また、assistants、threads、vector storesなど、アプリケーションの状態を保存するendpointは対象外です。
  • Anthropicは、ZDR契約を対象となる商用API利用に適用しており、コンシューマー向けプランには適用していません。利用ポリシーを執行するため、安全性分類器の結果は引き続き保持します。また、法令遵守や不正利用への対処に必要な場合は、データを保持することがあります。

つまり、「ZDRに対応しています」だけでは十分な回答になりません。確認すべきなのは、誰との間のZDRか、どのendpointが対象か、どのような例外があるか、という点です。

音声エージェントでZDRの範囲を特定しにくいのはなぜか?

1本の電話はいくつもの層でデータを生成します。しかし、LLMとのZDR契約がカバーするのは、そのうちの1つだけです。

1回の通話で生じるデータ生成・保持される場所LLMのZDR契約の対象か?
ライブ音声通信事業者、音声認識(speech-to-text)プロバイダー、音声プラットフォームいいえ
文字起こし音声認識プロバイダー、音声プラットフォームいいえ
応答ごとに送信されるプロンプトと文字起こしLLMプロバイダーはい(endpointが対象範囲内の場合)
合成音声音声合成(text-to-speech)プロバイダーいいえ
通話録音、ログ、ツール呼び出しデータ音声プラットフォームいいえ
通話後の要約音声プラットフォーム、および別のモデル呼び出しその呼び出し次第
タイムスタンプ、通話時間、電話番号、コスト音声プラットフォーム、通信事業者通常は保持される

通信事業者の層は、一部がプラットフォームの管理外にあります。Retellのプライバシーポリシーには、通信事業者が独立した管理者として通話データを処理する場合があると記載されています。その目的は、請求や不正防止など、通信事業者自身のためのものです。

ZDRは、よく混同される2つの管理策とも異なります。保持期間は、コンテンツを保存し、設定した日数が経過した後に削除するものです。PIIの墨消し(リダクション)は、識別子を除去した状態でコンテンツを保存するものです。これに対し、ZDRはコンテンツを一切保存しません。

Retellのストレージ設定はZDRとどう対応するのか?

Retellのドキュメントには、ゼロデータ保持というモードはありません。代わりに、エージェントごとのストレージ設定と保持設定が説明されています。ZDRに最も近い管理機能は次のとおりです。

  • Basic Attributes Only。Retellはメタデータのみを保存し、文字起こし、録音、ログは保存しません(データストレージ設定)。ただし、webhookには引き続き文字起こしと録音が届きます。録音リンクはwebhookの到着から10分後に失効するため、コンテンツは代わりに自社のシステムに保存されることになります。
  • Everything except PII。Retellは元の生データを削除し、スクラブ済みのコピーを保持します。通話ID、タイムスタンプ、通話ステータス、コストの各フィールドはスクラブされません。
  • 保持期間。エージェントごとに、1日から730日の範囲で自動削除を設定できます。デフォルトでは、データは無期限に保持されます。期限切れの録音、文字起こし、ログ、ナレッジベースの検索ログ、動的変数、メタデータは毎日削除され、復元できません。ただし、一部の基本的なメタデータは内部で保持されます(データ保持ポリシー)。
  • カスタムLLM。プロンプトと文字起こしを自社インフラ内や自社でホストするモデルで処理する必要がある場合、RetellのドキュメントではカスタムLLMの利用を案内しています。この場合も、電話通信、文字起こし、音声合成はRetellが担います。

保存するデータを減らすことには、代償もあります。Basic Attributes Onlyでは、Get Call APIが文字起こしや録音を返さなくなります。また、SIP障害のデバッグに使うPCAPファイルは、ストレージ設定がEverythingの場合にのみ作成されます。医療分野での構成については、AI電話エージェントのHIPAA準拠に関するガイドをご覧ください。

音声AIベンダーにZDRについて何を確認すべきか?

層ごとの回答を、書面で求めましょう。

  1. ZDRはどの層を対象としていますか?LLM、音声認識、音声合成、電話通信、ベンダー自身のプラットフォームのうち、どれが含まれますか?
  2. どのサブプロセッサーがZDRを導入済みで、どれがデフォルトの条件で稼働していますか?サブプロセッサーの一覧を求めましょう。
  3. それらのプロバイダーは、不正利用監視や安全性のために何を、どのくらいの期間保持しますか?
  4. 削除後も残るメタデータは何ですか?また、それは電話番号と紐づいていますか?
  5. 通話データは、ベンダー自身またはプロバイダーのモデルの学習やファインチューニングに使われますか?この点はDPAで回答を確認しましょう。
  6. コンテンツを保存しない場合、それはどこへ送られますか?webhook、エクスポート、期限付きリンクのいずれですか?
  7. 削除はバックアップにも及びますか?また、どのようなスケジュールで行われますか?
  8. 何も保存しない場合、どの機能が使えなくなりますか?通話履歴、QA、通話後分析、デバッグなどへの影響を確認しましょう。

ZDRが答えるのは、データをどのくらいの期間保持するかという問いです。データレジデンシーは、データをどこに保持するかに答えます。SOC 2 Type IIレポートは、監査期間を通じて管理策が有効に機能していたかを示します。この3つはまとめて確認しましょう。DPAのレビューについては、エンタープライズ向け音声AIコンプライアンスガイドで解説しています。

セキュリティレビューで、音声エージェントが何をどのくらいの期間保存するかをエージェント単位で管理する必要がある場合は、Retellのエンタープライズプラットフォームでの対応方法をご確認ください。そのうえで、パイロット期間中に実際の通話でストレージ設定をテストしてください。

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