ゼロデータ保持(ZDR)とは、プロバイダーが処理後にコンテンツのコピーを一切保持しないことです。LLMや音声AIベンダーにおける対象範囲と、確認すべきポイントを解説します。
ゼロデータ保持(ZDR)とは、サービスプロバイダーがプロンプト、文字起こし、音声などのコンテンツを処理し、応答を返した後にそのコピーを一切保持しない取り決めです。この用語は大規模言語モデル(LLM)のAPIに由来し、通常はリクエストとレスポンスの内容をプロバイダーのログから除外することを意味します。法律や認証ではなく、契約またはアカウントの設定です。
ZDRとは、モデルプロバイダーがリクエスト後に入力と出力を保存しないことを意味します。ただし、その対象範囲はプロバイダーごとに異なります。各プロバイダー自身のドキュメントから2つの例を挙げます。
つまり、「ZDRに対応しています」だけでは十分な回答になりません。確認すべきなのは、誰との間のZDRか、どのendpointが対象か、どのような例外があるか、という点です。
1本の電話はいくつもの層でデータを生成します。しかし、LLMとのZDR契約がカバーするのは、そのうちの1つだけです。
| 1回の通話で生じるデータ | 生成・保持される場所 | LLMのZDR契約の対象か? |
|---|---|---|
| ライブ音声 | 通信事業者、音声認識(speech-to-text)プロバイダー、音声プラットフォーム | いいえ |
| 文字起こし | 音声認識プロバイダー、音声プラットフォーム | いいえ |
| 応答ごとに送信されるプロンプトと文字起こし | LLMプロバイダー | はい(endpointが対象範囲内の場合) |
| 合成音声 | 音声合成(text-to-speech)プロバイダー | いいえ |
| 通話録音、ログ、ツール呼び出しデータ | 音声プラットフォーム | いいえ |
| 通話後の要約 | 音声プラットフォーム、および別のモデル呼び出し | その呼び出し次第 |
| タイムスタンプ、通話時間、電話番号、コスト | 音声プラットフォーム、通信事業者 | 通常は保持される |
通信事業者の層は、一部がプラットフォームの管理外にあります。Retellのプライバシーポリシーには、通信事業者が独立した管理者として通話データを処理する場合があると記載されています。その目的は、請求や不正防止など、通信事業者自身のためのものです。
ZDRは、よく混同される2つの管理策とも異なります。保持期間は、コンテンツを保存し、設定した日数が経過した後に削除するものです。PIIの墨消し(リダクション)は、識別子を除去した状態でコンテンツを保存するものです。これに対し、ZDRはコンテンツを一切保存しません。
Retellのドキュメントには、ゼロデータ保持というモードはありません。代わりに、エージェントごとのストレージ設定と保持設定が説明されています。ZDRに最も近い管理機能は次のとおりです。
保存するデータを減らすことには、代償もあります。Basic Attributes Onlyでは、Get Call APIが文字起こしや録音を返さなくなります。また、SIP障害のデバッグに使うPCAPファイルは、ストレージ設定がEverythingの場合にのみ作成されます。医療分野での構成については、AI電話エージェントのHIPAA準拠に関するガイドをご覧ください。
層ごとの回答を、書面で求めましょう。
ZDRが答えるのは、データをどのくらいの期間保持するかという問いです。データレジデンシーは、データをどこに保持するかに答えます。SOC 2 Type IIレポートは、監査期間を通じて管理策が有効に機能していたかを示します。この3つはまとめて確認しましょう。DPAのレビューについては、エンタープライズ向け音声AIコンプライアンスガイドで解説しています。
セキュリティレビューで、音声エージェントが何をどのくらいの期間保存するかをエージェント単位で管理する必要がある場合は、Retellのエンタープライズプラットフォームでの対応方法をご確認ください。そのうえで、パイロット期間中に実際の通話でストレージ設定をテストしてください。