AIエージェントマネージャーとは、コンタクトセンターでAI音声エージェントが実際の通話でどう機能するかに責任を持つ担当者です。主な仕事は、通話のレビュー、「解決した通話」の基準づくり、修正内容と人に回す通話の判断、そして結果の報告です。多くのコンタクトセンターには、この仕事に最も適した人材がすでにいます。スーパーバイザーです。
この変化はすでに始まっています。2025年9月から10月にかけて、カスタマーサービス・サポート部門のリーダー321人を対象にGartnerが調査を実施しました。その結果、85%が人間のエージェントの職責を拡大していると回答し、75%がエージェントをサービス組織内のまったく新しい役割へ移していると回答しています(Gartner、2026年4月 )。Harvard Business Reviewは、AIエージェントを監督する人々をエージェントマネージャー と呼んでいます。AIエージェントの学習、協働、成果、そして人間と安全に働けるかどうかに責任を持つリーダーのことです。
現在、コンタクトセンターのスーパーバイザーはどのような仕事をしているのか? コンタクトセンターのスーパーバイザーは、シフト中に人間のエージェントのチームをまとめます。キューとサービスレベルを監視し、メンバーがスケジュールどおり稼働しているかを確認します。そのうえで、通話中のコーチング、エスカレーション対応、通話サンプルの品質評価、チームの数値報告を担います。つまり、人を中心に組み立てられた仕事です。
こうしたスキルは、AI音声エージェントが導入されても役立ちます。ただし、対象となる「働き手」の種類が変わります。AIエージェントにシフトや休憩は必要ありません。しかし、通話を聞き、誤りに気づき、確実に修正させる人は必要です。人間のチームにも引き続きスーパーバイザーが必要です。転送された通話は人間のチームに届き、電話対応の人数は今もワークフォースマネジメント で決まるからです。
AI音声エージェントが電話に対応すると何が変わるのか? AIエージェントが対応する通話について、スーパーバイザーが管理するのは勤怠や処理時間ではなく成果になります。通話は解決したか、転送は正しい理由で行われたか、失敗したならその原因は何か、という点です。以下の表は、スーパーバイザーの主要業務が、AIエージェントマネージャーとしてどう変わるかをまとめたものです。
スーパーバイザーの業務 人間のエージェントの場合 AI音声エージェントの場合 リアルタイム監視 キュー、サービスレベル、電話対応中のメンバーを監視する 通話成功率、転送率、アラートを監視し、数値が動いたときは実際の通話を聞く コーチング 隣について行うコーチング、評価基準の調整会議、1on1 聞いた内容をエージェントの指示やナレッジベースへの具体的な変更として書き起こし、その後の通話で効果を確認する 品質保証 少数の通話サンプルを手作業で評価する 解決した通話の基準を定めてAIにサンプルを評価させ、AIが指摘した通話を確認する エスカレーション エージェントが行き詰まったときに通話を引き取る AIエージェントがどの通話を誰に転送するかを決め、必要に応じて実際の通話を引き継ぐ スケジュール管理 予測される通話量に合わせてシフトを組む AIエージェントが対応する通話の種類と、人に残す通話の種類を決める レポーティング 処理時間、スケジュール遵守率、稼働率 解決率、転送率とその理由、失敗の原因、人間のチームへの負荷
責任の範囲は変わりません。スーパーバイザーは引き続き、担当範囲内のすべての通話で顧客体験に責任を持ちます。変わるのは「てこ」です。人間のエージェントなら、コーチングの対象は一人です。AIエージェントなら、設定を一度変えるだけで以降のすべての通話が変わります。良い修正の価値はそれだけ大きくなり、悪い修正の代償も大きくなります。そのため、テストが仕事の一部になります。
AIエージェントマネージャーは毎日・毎週どのような仕事をするのか? AIエージェントマネージャーは決まったサイクルで働きます。毎日の短い稼働状況チェック、失敗した通話を修正リストにまとめる週次レビュー、そしてエージェントに次に何を任せるかを決める月次の判断です。
AIエージェントマネージャーの日次・週次・月次の業務。週次レビューでCXオートメーションエンジニアへの引き継ぎを行います。図:Retell AI、2026年10月。 日次。 最初に見るのはキューではなくアラートです。Retellでは、アラートルール を設定すると、通話成功率の低下、ネガティブな感情の増加、QA不合格の通話の増加があったときにメールまたはwebhookで通知が届きます。また、分析ダッシュボード では、成功率と転送率をエージェント別・エージェントバージョン別にグラフで確認できます。数値が動いたら、その背景にある通話を開いてください。Live Monitoring を使うと、通話の文字起こしをリアルタイムで追えます。無音で聞くこと(発信者にもエージェントにも通知されません)も、通話を引き継いで自分で発信者と話すこともできます。引き継ぐと、その通話ではAIエージェントが完全に停止します。そのため、引き継ぎはコーチングの手段ではなく、救済措置として使ってください。
週次。 品質をまとめてレビューします。AI QA は、チームが設定した解決基準と指標のしきい値に照らして通話サンプルを評価します。ハルシネーションやナレッジベースの誤りなどの問題も、文字起こしの根拠とあわせて指摘します。指摘された通話を確認したら、失敗を原因別に分類し、修正リストを作成します。ナレッジベースに不足している情報、わかりにくい指示、発動が遅すぎる転送ルールなどです。修正ごとにテストケースを用意し、テストに合格した後でのみ新しいエージェントバージョンを公開 します(プロンプトのバージョン管理 を参照)。基準づくりには、当社の音声エージェントQAスコアカード が役立ちます。
月次。 担当範囲を決めます。AIエージェントが解決できている問い合わせ理由と、転送が続いている問い合わせ理由を確認します。そのうえで、拡大するもの、維持するもの、人に戻すものを決めます。結果は、経営陣がすでに追跡している音声エージェントのKPI で報告します。
AIエージェントマネージャーとCXオートメーションエンジニアの違いは? 成果に責任を持つのがAIエージェントマネージャー、構築に責任を持つのがCXオートメーションエンジニア です。CXオートメーションエンジニアの仕事 に関する記事で紹介したとおり、CXオートメーションエンジニアは顧客対応AIエージェントの継続的な改善を監督する社内担当者です。設定、ナレッジベースの更新、インテグレーション、リリース前のテスト、品質レビュー、コンプライアンスを担います。これらは導入初期には、ベンダーのフォワードデプロイドエンジニア が担うことの多い業務です。AIエージェントマネージャーはその隣に位置する運用担当で、通話、顧客、人間のチームに最も近い存在です。
役割 責任範囲 主な出身 ベンダーのフォワードデプロイドエンジニア 最初のエージェント、初期設定、顧客チームのトレーニング ベンダー CXオートメーションエンジニア 設定、ナレッジベース、インテグレーション、テストケース、リリース、ダッシュボード、アラート、コンプライアンス オペレーションマネージャー、QAリーダー、IVRまたは電話システムの管理者、WFMアナリスト、シニアエージェント AIエージェントマネージャー 日々の通話パフォーマンス、次に修正すべき点、人に残す通話、成果 コンタクトセンターのスーパーバイザーやチームリーダー 人間のエージェントチーム 転送された通話、例外対応、デリケートな会話 既存のエージェント
大規模なコンタクトセンターでは、多くの場合2人が一緒に週次レビューを行います。小規模なチームでは、1人が両方を兼ねます。いずれの場合も、ローンチ時の記事で述べた目標は変わりません。エージェントの改善スピードを決めるのは、ベンダーではなく自社です 。
引き継げるスーパーバイザーのスキルと、新たに必要なスキルは? 引き継げるスキル:
問い合わせ理由、ポリシー、それについて電話をかけてくる顧客に関する知識 通話がうまく進んでいるかを数秒で聞き分ける力 コーチングの勘(今後はエージェントが従える指示として書き起こします) 人が対応すべき通話を見極める感覚(優れたエスカレーションマトリクス の土台になります) 経営陣が行動に移せる形で成果を報告する力 新たに必要なスキル:
AIエージェント向けにわかりやすい指示を書く力(プロンプトエンジニアリング の基礎) 文字起こしを大量に読み解く力(その中のツール呼び出しや転送も含む) テストケースで考える力:発信者が何を求めているか、成功した通話とはどういうものか リリースの習慣:下書きを変更し、テストし、公開し、数値が下がればロールバックする AIが評価できるほど明確に成功を定義する力 HBRが挙げるエージェントマネージャーの能力は、AIの運用リテラシー (エージェントの仕組み、プロンプトが成果に与える影響、失敗の診断方法)と、深い業務知識から始まります。スーパーバイザーは後者をすでに備えています。前者は教えることができます。
スーパーバイザーをこの役割に移行させるには? 小さく始めましょう 。役割を現場全体に広げる前に、まず1人のスーパーバイザーに1つのAIエージェントの責任を実際に持たせます。
1人のスーパーバイザーを、全体の一部ではなく、1つのAIエージェントまたは1種類の通話に割り当てます。 業務に必要なアクセス権を付与します。Retellでは、Live Monitoring を利用できるのはAdminロールとDeveloperロール、および通話管理権限を持つカスタムロールで、Memberロールは利用できません。エージェントでPIIスクラビングが有効な場合、実際の通話をモニタリングできるのは生データを閲覧できるロールに限られます。初日までに、アクセス制御 で両方を確認してください。 QA担当者とCXオートメーションエンジニアと一緒に「解決した通話」の定義を作成し、AIによる評価とレポーティングの両方に使います。 CXオートメーションエンジニアとの週次レビューを予定に組み込み、各修正を、問題が見つかった通話から修正を反映したバージョンまで追跡します。 人間のチームも担当範囲に含めます。AI音声エージェントと人間のチーム間の転送 がどのように届いているかを確認してください。引き継ぎがうまくいかないと、双方に悪影響が出るためです。 新しい仕事に合わせて、スーパーバイザーの目標を変更します。 クライアントのためにAI音声エージェントを運用するBPOや代理店では、クライアントのプログラムごとに同じポジションが存在します。そして、クライアントに成果を報告するのはAIエージェントマネージャーです。
AIエージェントマネージャーをどう評価すべきか? 活動量ではなく、担当範囲内の通話の成果で評価します。
通話成功率(チーム独自の「解決した通話」の定義を使用) 転送率と、正しい理由で行われた転送の割合 評価対象サンプルのQA合格率と、週ごとの主な失敗原因 ネガティブな感情の割合 問題の発見から、テストに合格した修正を本番環境に反映するまでの時間 転送された通話による人間のチームへの負荷 プロンプトの編集回数やレビューした通話数を数えても、評価されるのは動きであって、通話の質の向上ではありません。
何から始めるべきか? 通話量が最も多いAIエージェントを選び、その責任者となるスーパーバイザーを決め、今月中に最初の週次レビューを実施しましょう。プラットフォームを比較検討している場合は、スーパーバイザーがチケットを発行しなくても、通話のレビュー、評価、介入を行えるかを確認してください。RetellのAI QA は、自社の基準に照らして通話を評価します。また、エンタープライズのコンタクトセンターがエンタープライズプラン でこうした役割をどう整えているかについても、当社チームがご説明します。
よくある質問 AIエージェントマネージャーとは? AIエージェントマネージャーは、担当領域でAIエージェントがどう機能するかに責任を持つ人です。コンタクトセンターでは、AI音声エージェントの通話をレビューし、「解決した通話」の基準を定めます。そして、何を修正し、どの通話を人に回すかを判断し、成果を報告します。この役職名はまだ一般的ではありませんが、仕事自体はすでに行われています。
AI音声エージェントはコンタクトセンターのスーパーバイザーに取って代わるのか? これまでのデータが示しているのは、仕事がなくなることではなく、仕事が変わることです。サービス部門のリーダー321人を対象にしたGartnerの調査では、85%が人間のエージェントの職責を拡大し、75%がエージェントを新しい役割に移しています。AIエージェントの管理には、スーパーバイザーがすでに持っている通話への判断力が欠かせません。
AIエージェントマネージャーに必要なスキルは? 中心となるのは、通話、顧客、ポリシーに関するスーパーバイザーとしての知識です。新たに必要なスキルは、AIエージェント向けにわかりやすい指示を書く力、文字起こしを大量に読み解く力、テストケースで考える力、そしてAIが評価できるほど明確に成功を定義する力です。
スーパーバイザーはAIエージェントの通話をリアルタイムで聞けるのか? Retellでは可能です。Live Monitoringを使うと、スーパーバイザーはリアルタイムの文字起こしを追えます。発信者にもエージェントにも通知せずに無音で聞くことも、通話を引き継ぐことも、通話を終了することもできます。引き継ぐと、その通話ではAIエージェントが完全に停止します。ウィスパーモードはありませんが、開発者はUpdate Live Call APIを使って、テキストで実際の通話を誘導できます。
AIエージェントマネージャーはCXオートメーションエンジニアと同じか? 厳密には異なります。CXオートメーションエンジニアは、エージェントへの変更を構築し、テストし、リリースします。AIエージェントマネージャーは日々の成果に責任を持ちます。何を良い通話とみなすか、次に何を修正するか、AIエージェントと人間のチームがどう連携するかを決めます。小規模なチームでは、1人が両方を兼ねることも少なくありません。